オリジナルのカーペンター版と比べてあーでもない、こーでもないと文句を垂れるのは大人げないこと。これはこれとして楽しむのが大人のたしなみ。私は自分でもよく解らない感覚なのだが、好きな俳優とは少し違った、なんと説明したらいいのか、とにかく〝出演しているとつい見てしまう役者″が何人かいるのだ。イーサン・ホークもその一人だ。アクション映画に出演することが多いのだが、マッチョでもないし、強烈なリーダーシップ感を出すわけでもなく、今作でも署長代理を務めるのだが、頼りがいがあるんだかないんだかよく分からないところが実にイイ。物語は、大雪のクリスマスの夜、ビショップ(ローレンス・フィッシュバーン)を含む数人の犯罪者を乗せた護送車が雪のため止む無く閉鎖寸前のイーサン・ホークが代理で署長を務める13分署へと避難してくる。ビショップは大悪党なのだが、汚職を働いている警官たちの証拠を握っており、法廷取引により証言する予定であったのだ。それを防ぐべく悪徳警官の一団が大雪の夜の中襲い掛かってくのである。オリジナルとは少し設定を変えているのだが、砦に立て籠り圧倒的な敵と戦う、シンプルだが燃える展開であることには変わりない。ここで問題になるのが、最新装備で固めた悪徳警官の大群に挑む主人公をどう描くかということである。圧倒的な戦力の差を主人公達の咄嗟の機転や知恵を絞った末の巧妙な作戦などで切り抜けていく描写を丁寧に演出しなければならなかったのだ。しかし今作ではそれがほとんどなかった。突撃しては全滅を繰り返す悪徳警官側がただのバカに見えてしまうのだ。ほんと、惜しい!ここを上手く演出してくれていたら大傑作になったと思う。ローレンス・フィッシュバーンはさすがの存在感で、悪党は悪党なのであるけれど自分の中で譲れない矜持(きょうじ)を頑なに貫き通す男を演じている。いつしかイーサン・ホークとの奇妙な信頼関係が生まれていくのもお約束。ぜひDVDを買って欲しい、いや買えっ、オリジナルも買えっ、そして見ろっ!!
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