私が最も心を揺さぶられたであろう作品。物語は主人公がある日目覚めた時に始まる。自分の記憶が全くない。どこの誰かもわからない。しかも自分は不死身の身体である。途方にくれる主人公であるが、時々夢に出てくる不思議な場所を目指さなければならないという運命を自覚し、ヘラクレスなどの仲間たちと出会い旅を続ける。世界のバランスは崩れ、魔物が跋扈し始め、恐怖に包まれるのだが、神々は沈黙を決め込み、手を貸そうとはしない。しかもその原因が自分に関係していることが徐々に明らかになっていく。そこで最初の疑問に立ち返ってしまうのだ。「自分はいったい何者なのか、なぜ不死身なのか?」と。実に秀逸な副題である。そもそも物語に入り込むということは主人公に感情移入することであるが、ゲームというメディアは自分で主人公を操作するその特性から、感情移入という一点に関して、小説や映画には到底及ばない領域に達しているのである。最後に驚愕の事実が明かされるのであるが、それがまるでプレイヤー自身のことであるかのごとく失意のどん底に叩き落される。しかし、徐々にまた物語は上昇し始め、感動的なラストへとプレイヤーを導いてゆく。見事な脚本である。そして、かすかな希望を残すエンディングで幕を閉じるのである。
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